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老いを学ぶ

2012年09月12日

老いの工学研究所提供

なんでことねぇ

老いの工学研究所

阿部松夫さん(92歳)宮城県南三陸町歌津地区田浦漁港 漁師(元漁労組合長)

(撮影:小山一芳、文:代田耕一)

東日本大震災からひと月くらいたち、岩手県から南に移動し宮城県の南三陸町の漁港にさしかかった時のことです。
あたりは壊滅状態で直視できないほどでした。ところがその惨状のなかで、黙々と漁具を整理している人がいるではありませんか。あたりで日常の作業をしている人など、もちろんいません。ひときわ異彩を放っていたその方に撮影の許可をとり、お話をお伺いしました。

お名前は阿部さん、お年は91歳とのこと。田浦漁港ではじめてワカメやホタテやカキの養殖をはじめられ「育てる漁師」の先駆けとなり、漁労長も勤められた、言わばご長老です。震災時、ご自身は奥さんを気仙沼の病院に連れて行っていたので、かろうじて命は助かったのですが、ご自宅は全壊し、漁船も流されてしまったそうです。
そんな状態にも関わらず、淡々とした語り口にかえって凛とした強さを感じました。

11月の終わり頃にまた、阿部さんに会う事ができました。
阿部さんは「昭和三陸地震」「チリ地震」そして今回と三回も大きな津波にあっています。さらに戦争にいき「乗っていた船が沈んだが漁師 の生きる術で生き延びた」とのこと。その後はフィリピンに流れ着き、「海藻を食いつないで生き残ったが他のみんなは死んだ。」と壮絶な体験を語ってくれました。

「こんな地震、津波はなんでことねえ。とにかくやるしかない。海の近くに住んで、魚や海藻を食って、仕事をしてたら老けねえ。収穫期には猫の手も借りたいぐらい忙しい。都会の年寄りもこっちにきたら老けてる暇はねえ。」

阿部さんからは、悟りみたいなものを感じます。

とその時の事です。それまで厚い雲に覆われていた空から、強い日差しが阿部さんの顔に差し込んできました。強さだけではない何かが宿った気がして夢中でシャッターを押していました。

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