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老いを学ぶ

2014年06月03日

老いの工学研究所提供

「高齢者の役割」に対する世代間の認識の差【高齢者のありよう、役割に関する調査】

老いの工学研究所

高齢期のライフスタイルのシンクタンク、NPO法人「老いの工学研究所」は、『高齢者のありよう、役割に関する調査』を実施し、65 歳以上の高齢者851 名から回答を得ました。
その中から、「高齢者の役割に対する世代間の認識の差」の部分について、お知らせ致します。

●若い世代は、高齢者に“若々しさ”より“年の功”を求めている

高齢者の役割や責任などについて、6項目の質問をしたところ、以上のようになりました。

世代を問わず、高齢者の役割として期待されているのは、
* 伝承(「知識・知識・技術」や「伝統・慣習」を次世代へ伝えていくこと。)
* 体現(規範やマナーを教えるだけでなく、実際に実行してみせること。)
* 交流(若い世代と、交流する機会を持つこと。)
の3点であると推測できます。
技術伝承や伝統継承といった課題は、伝統ある製造業などで既に明確になっていますが、社会的な観点からは、あるべき規範やマナーを実際にやってみせることや、伝承の場としての世代間交流が、高齢者の重要な役割として共通に認識されているのが分かります。

一方、「高齢者もIT機器など新しい製品を使いこなすべき」と考える人は、20歳代では約3割、30歳代以降でもすべての世代で半数程度にとどまりました。
また、アンチエイジングに励むべきだと考える人は、年代があがるにつれて6割を超えてきますが、40歳代までは4~5割程度となっています。
このような開きから、若い世代が高齢者に期待しているのは、新しい機器になじむ、アンチエイジングといった“イマドキで若々しい姿”ではなく、いわゆる“年の功”を存分に発揮している姿であると考えられます。

●若いほど「高齢者を優遇しすぎだ」と考える傾向。高齢者も3割が同意

若い世代の6~7割が、高齢者に対してもっとお金を使ってもらいたいと思っている一方、高齢者は消費・投資に消極的であることが分かります。
現役世代が高齢者を「経済的な余裕のある人達だ」と見ているのに対し、高齢者自身は「先行きの経済的不安を感じる人」「余裕があっても財産を残すことを優先する人」「お金の使い道があまりないと思う人」など多様であり、このあたりの認識のギャップが表れているものと思われます。

また、「公的制度で、高齢者を優遇しすぎだ」「高齢者の政治に対する発言力が大きすぎる」とした割合は、若い世代ほど多くなっており、社会保障の世代間格差などの問題の一端が伺える結果となりました。

ただし、60歳代以降で「公的制度で、高齢者を優遇しすぎだ」「高齢者の政治に対する発言力が大きすぎる」とした人も30~40%おり、次世代への配分を大きくすべきだ、次世代の意見を取り入れるべきだ、と考えている高齢者が少なくないことは注目に値します。

●生涯現役志向は低調。「生涯現役社会の実現」という方針の共感・浸透が進まず。

「生涯現役でいるべきだ」と考える人は、40歳代で65%まで上昇しますが、50歳代以降は50%台で推移しました。

また、「後進に道を譲るべき」が4割程度、「悠々自適でいるべき」も7割程度と、世代によらず一定の割合があり、仕事などから身を引いて、その後は静かに暮らすような、昔ながらの高齢者のライフスタイルが根強い支持を集めていることが分かります。

超高齢社会を迎えて、『生涯現役社会』の実現が国の重要方針となっていますが、以上の結果からは、この方針について共感や浸透が進んでいるとは言えない結果となっています。

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