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老いを学ぶ

2013年06月06日

老いの工学研究所提供

この技術を、廃れさせるわけにはいかない。

老いの工学研究所

村上 央(70歳)気仙船匠会所属/村上造船所(和船建造/修理・櫓制作/販売)

(撮影:小山一芳、文:代田耕一)

村上さんは漁師たちには有名な船大工で「神さま」と呼ばれた名人です。昔からその噂を聞いていたので一度お会いしたいと思っていました。
今回ようやくその機会に恵まれ、陸前高田市にある村上さんの仕事場を訪ねました。「神さま」と聞いていたので緊張しましたが、実際お会いしてみると穏やかな感じの普通の職人さんでした。
普段は漁師向けにザッパ船といわれる和船を製作されていて、作業場には気仙地方から伐採された木材が所狭しと置かれていました。用材は基本的に杉で、一部は檜。和釘は尾道でつくられたものを使うとのこと。

和船は操縦性も乗り心地も抜群であわび・ウニ漁に最適なのですが、ペンキを塗り替えるなどメンテナンスが大変でFRP船に取って代わられてしまったそうです。
かつて気仙には「気仙大工」と呼ばれる職人集団がいて船大工も100人くらいいたのですが、今は村上さん一人だけになってしまい、彼は「この技術・伝統が廃れるのはしのびない」と悩んでいます。「注文が増えれば休業したり、廃業したりしている昔の仲間を呼べるのだが」とも。

しかし村上さんは手をこまねいている訳ではありません。彼が所属する気仙船匠会(気仙地方の船大工が集まる)は昔ながらの木造和船の建造に取り組んでいて、2009年には映画「カムイ外伝」で使われた8隻の木造船を特産の気仙スギを使い丁寧に仕上げました。さらに秘伝の技をつたえるために「菱垣廻船」(江戸時代に大阪などの上方と江戸の消費地を結んだ廻船)を大阪の「海の時空館」に見事に再生、復活させました。もちろんこれらの船は実際に海を航行しており、気仙船匠の高い技術力を実証しました。 村上さんはただ「後継者が出てくれれば」と願いながら作業をしていたそうです。

村上さんは「神さまが仕事場のギリギリのところで津波を止めてくれた。だからこの技術・伝統は廃れさせるわけにはいかない」と決意されています。この撮影とインタビューも何かきっかけになるかもしれないと快く了解していただきました。
もし木造和船や船大工に興味をお持ちになられた方は、是非、村上造船所の村上さんを訪ねてみてください。


(※「気仙大工」と呼ばれる集団は、東北を中心に、北は北海道、樺太、満州から、南は関東、江戸、さらに西国まで、全国に足跡を残した一大職人集団でした。彼らは多くの寺社や民家を建設し、大工、左官、彫刻、建具など多彩な技を競いあった特異な集団でもありました。)

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