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老いを学ぶ

2012年11月13日

老いの工学研究所提供

なんだ、この、馬鹿やろう

老いの工学研究所

石嶋一男さん(74歳)東京都江東区 船宿ご主人 江東区釣り船組合の頭

(撮影:小山一芳、文:代田耕一)

昭和13年生まれの石嶋一男さんは江戸末期から続く船宿「深川富士見」のご主人です。この下町情緒にあふれる船宿は平岩弓枝作の連作時代小説シリーズ『御宿かわせみ』(おんやどかわせみ)のモデルになったとお伺いしました。

「俺が一番でけえ船に乗っている。」ご自慢は日本最大の屋形船「北斎」。全長22m、重量48tで142人乗りの大型船です。

お会いしてびっくりしたのはご主人が「なんだ、この、馬鹿やろう」と撮影している間ずっと怒ってばかりいるのです。お怒りの対象もいろいろで、営業ご担当の息子さんや船宿で働いている従業員、奥さん、そして自分にも怒っているのです。

お話をお聞きしているうちに、ご主人の「なんだ、この、馬鹿やろう」は怒りではなく「なんでわからねえんだ、あともう少しじゃないか」という叱咤激励なのだということに気づきました。それも自戒の念も含めて。

老舗の船宿としての仕込み、屋形船の職人としての所作、あるいは釣り船の船頭としての目利き、これらは一朝一夕で習得できるものではありません。そして決して終わることのない修行の世界に生きてきたご主人にとって、職人や跡継ぎの息子さんに対して厳しく接するのは、弟子を一人前に育てる親方としての義務なのです。

ご主人は下町のチャキチャキのいなせな江戸っ子なのですが、熟練者として妥協しないその凛とした姿勢、毅然としたたたずまいから品格さえ感じました。昔、大手町のハイカラな職業婦人の走りだった奥様と結婚したご主人は、いまでも当時の名残十分です。

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