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老いを学ぶ

2014年12月11日

老いの工学研究所提供

ある高齢者からのお便り『「延命治療の制限」と「尊厳死」の法制化について』

老いの工学研究所

老いの工学研究所のモニター会員で、83才の男性からお便りをいただきました。
ご本人の了解を得て、原文そのままで掲載いたします。

====
「延命治療の制限」と「尊厳死」の法制化について

前略
高齢者へのより快適な「住まい」や「街づくり」等々、日ごろの貴研究所の活動には心より感謝を申し上げ、敬服する次第であります。
然し、当然のことながら、それらの「快適な老いの生活」のその後には、ごく一部の「老衰」を除いて誰にでも必ず訪れる、苦しく、悲しく、哀れな「末期」が、そして「死」が待っていると考えられます。
「脳梗塞」「脳卒中」「心筋梗塞」その他の突然の「病」、その後には「長患い」や「寝たきり」が続く。そして、痛みと苦しみにさいなまれながら、医療機関により「延命治療」が施される。「本人の意思」や「家族の要望」は無視され、「命は大切な物」「命は掛け替えのない物」という一方的な「倫理観」から、徹底的に「延命治療」が施されます。
然し一方で、苦しみに耐えながら生き長らえている本人にとって、その「延命措置」が、本当に人間の「尊厳」に関わる真の「倫理」なのだろうか?、「幸せ」なのだろうか?

一般的に、社会の中では、“貴方の命は貴方だけの物ではないよ、親も子も兄弟もいるよ、皆を悲しませてはいけないよ、元気で長生きしなくちゃー、命は大事にしなくちゃー・・・”と、もっともらしく言われています。
然し、「苦しみ」と「絶望」の中にいる本人にとっての本音は、“社会や親兄弟はどうでもいい、早く楽にしてくれ、早く死なせてくれ!・・・”だと思います。
所詮、人の「肉体」は、神や仏の世界では生きられません。何と言われようと、「命の尊厳」は究極のところ、その人の物、本人の物です。
「余命」幾ばくもない本人の意思や、家族の要望を無視しての「延命治療」は残酷です。
先月、アメリカで「脳腫瘍」で余命半年と宣告された29才の女性が、「安楽死」を法律で認められているオレゴン州に移住し、医師による「安楽死」を遂げた、との報道がありました。現在、「終末期の患者の選択(安楽死)に関する欧米の現状は、アメリカの一部、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、イギリス、フランス、スイスの各国で法制化されている」と報じられていましたが、何故日本では、法制化の気運さえも無いのでしょうか?

一方では、今や日本の人口の1/4の約3,500万人が65才以上の高齢者で占められています。このまゝのペースで推移しますと、少子化に因り加速され、15年後には1/3、30年後には1/2と、正に超高齢社会になり、日本の経済状況はパニック状態、特に高齢者が受ける年金が極端に不足するなど、末期状態の到来が必至です。
その時になって、“貴方の命は貴方だけの物ではない”とか“元気で長生き”とか、のんきな事を言っていられません。そのような社会になると、極端な言い方ですが、「生きる年齢制限」を法制化せざるを得ない時代が来ないとも言い切れない気がします。
例えば、80才以上で「重病」に罹り、余命が数年とか、数か月と診断された場合、「安楽死」の薬を「主治医」が保管し、本人が強く「死」を望んだ時に投与出来る仕組み、等々。

日本でも、欧米の先進国のように「終末」を迎えた時の「尊厳死」や「安楽死」を早急に法制化せねば、と考えられます。
どうか、貴研究所におかれても、此の件に関する「フォーラム」の開催やその他の方策により政府を動かすような大きな「うねり」を起こして頂くよう切に願うものであります。

私事ではありますが、過去15年の間に、「延命治療」により両親と姉の3人の、病魔に犯され哀れで悲しく、苦しみながらの最期を看取った経験を持っております。
かく言う私も現在83才、どうに平均年齢を過ぎ、何時なんどき、前記のような突発病状を起こし得る十分な年令になっています。
重ねてお願い致します。日本でも早く「尊厳死」「安楽死」が法制化されるような大きな運動を起こしていただくようお願い申上げます。

草々

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