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老いを学ぶ

2013年01月15日

【寄稿】お口の健康(3):「虫歯と、脱灰と再石灰化」

歯科医師 小倉才子

今回は虫歯のお話をしましょう。私が大学生の頃は早期発見・早期治療と言われ、小さな虫歯も早く見つけて早く削って治すことを習いました。
しかし卒業して10年も経たないうちに、初期虫歯は削ってはいけないというように歯科界の方針が変わりました。私にとっては大きな衝撃だったことを覚えています。それまでの常識が未来の非常識になる可能性があることを学んだのでした。
実はお口の中では毎日毎食後、脱灰(だっかい)と再石灰化(さいせっかいか)が起こっています。
歯の表面に付いた歯垢(しこう)(プラーク)内の虫歯菌が作る酸が溶け出し、歯の表面のエナメル質に含まれるミネラル分(リン酸やカルシウムなど)が溶け出すことを「脱灰」と言います。虫歯はこのことによって起こります。
「再石灰化」とは、細菌の出す酸によって脱灰されたエナメル質が、唾液中に含まれるリン酸カルシウムによって修復される現象です。
つまり脱灰のスピードより再石灰化のスピードが早ければ、歯は自然に修復されるので虫歯にはならないということです。表面のエナメル質が初期虫歯の状態であっても、削る必要はありません。ただお口の中が虫歯になりやすい状態になっていますから、適切なケア(ブラッシング)やフッ素塗布などで再石灰化をしやすくする必要があります。
逆に脱灰のスピードが再石灰化を上回ると、エナメル質の修復が追いつかなくなり、虫歯になってしまいます。穴があいてしまうともう虫歯は治らなくなりますから削って治す必要があります。
ではどういう時に脱灰のスピードが上回ってしまうかというと、糖分を取り過ぎる食生活を続けている時です。脱灰と再石灰化のバランスが崩れてしまうのですね。まずは食生活に気をつけて、お口の中の環境を再石灰化が起こりやすい状態にすることが重要です。食事は楽しく良く噛み、唾液がたくさん出るようになさるのがよいでしょう。
食後すぐに歯磨きを勧める先生もいらっしゃいますが、私は食事の後はゆっくりお茶を飲んで、リラックスして副交感神経を優位にすることをお勧めしています。ご自身の唾液が十分出るようにするとよいと考えています。
ただ寝ている間は唾液が出にくいので、寝る前と朝はしっかりと歯磨きをして頂いた方がよいです。歯磨き粉も虫歯予防に効果的なものが出ておりますので、少しつけて丁寧に磨くとよいでしょう。

養生訓で有名な貝原益軒は83歳になっても歯が1本も抜け落ちなかったそうです。その養生訓の中には歯に関することも書いてあります。
「朝ごとに、温湯にて口をすすぎ、昨日よりの牙歯の滞を吐きすて、ほしてかはける塩を用ひて、上下の牙歯とはぐきをすりみがき、温湯をふくみ、口中をすすぐ事二三十度・・・毎朝かくのごとくしておこたりなけらば、久しくして牙歯はうごかず。老いてもおちず。虫くはず」

現代語訳
毎朝、ぬるま湯で口をすすぎ、昨日からの歯にたまっているものを吐き捨てる。次に干して乾いた塩を使って上下の歯ぐきを磨き、ぬるま湯をふくみ、口中を二、三十回すすぐ。毎朝このようにして怠らなけらば、あとになって歯がゆらぐことはない。老年になっても抜けない。虫歯にもならない。
(すらすら読める養生訓 立川昭二 講談社より)

この本には他にも気持ちの持ち方や楽しむ生き方などとてもわかりやすく養生訓をまとめてあります。
「養生の術を学んでよくわが身をたもつべし。長生きすれば楽多く益多し」
とてもお勧めの本ですので是非ご一読下さいませ

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