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老いを学ぶ

2013年05月10日

「歯周病と全身疾患(狭心症、脳梗塞、糖尿病など)の関係」~お口の健康(6)

歯科医師 小倉才子

今回は歯周病と全身疾患について書いてみます。
歯周病は生活習慣病と認定され、様々な全身疾患との関連が報告されており、歯周病の治療や予防に対する重要性は非常に高まりつつあります。
以下、近年歯周病と関連があると言われている疾患を上げてみます。

①狭心症・心筋梗塞
動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまい心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。
動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。
歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内に粥腫~じゅくしゅ=プラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができ、血液の通り道は細くなります。プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰ったり血管の細いところで詰まります。
歯周病患者では、心臓血管系疾患の発症リスクが50~150%程度高いとする報告が多いようです。

②脳梗塞
脳の血管のプラークが詰ったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。

③糖尿病
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきているそうです。
歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。 血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ内毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。 血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。 TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

現在では歯周病は、予防でき治療も可能です。 大切なのは予防、診断、治療、そしてメンテナンスです。毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防して、全身の生活習慣病のリスクを下げてくださいね。そして少なくとも半年に一度は歯科医を受診し、生活習慣も含め口腔内のケアを受けることをお勧めします。

また次のことも歯周病を進行させる因子となります。
1 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
2 不適合な冠や義歯
3 不規則な食習慣
4 喫煙
5 ストレス
6 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
7 薬の長期服用

生活習慣病も予防のためにもできることから改善されることをお勧めします。

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