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老いを学ぶ

2014年11月19日

老いの工学研究所提供

死を受け入れるのは「認識・判断できなくなった時」【現役世代の死生観に関する調査】

老いの工学研究所

特定非営利活動法人「老いの工学研究所」が行った、現役世代の死生観と現在の生活姿勢などの関係に関する調査から。(20~59 歳までの201 名が回答)

1.“死を受け入れる”とすれば、どのようなときか?

上は、「死を受け入れるのは、どのようなときだと想像しますか?」という質問に対して、「そうだ」「ややそうだ」と回答した人の割合です。
「認識・判断・思考する力がなくなったとき」「周囲に対して面倒・迷惑をかけるようにな
ったとき」が、非常に高い割合となり、多くの人が 自立が失われたら、死を受容すると考え
ていることが明らかになりました。
「医師に治療できないと判断されたとき」は、47%にとどまり、医師に死に時の判断をゆ
だねる人は、半数に満たないという結果となりました。

2.死に関する体験や考え方

「死について真剣に考えるきっかけがあった」人の割合は72%と高くなりましたが、「信仰が、死に対する態度の基礎になっている」人は23%と少なく、死を考えるきっかけは信仰よりも、身近な人の死や災害・事故・事件等の報道によるものではないかと考えられます。

本アンケートでは、「自分の死を、しっかり意識していますか?」という質問を行いました。次に、自分の死を意識している人(「そうだ」「ややそうだ」と回答した人)と、自分の死を意識していない人(「そうでない」「ややそうでない」と回答した人)の違いを 見ていきます。

3.死への意識と“死を受け入れる時”との関係

自分の死を受け入れる時について、「自分の死を意識している人」と「意識していない人」とで比較したところ、上のようになりました。
「人の役に立てなくなったとき」「生きがいがなくなったとき」「他人との交流がなくなったとき」の3項目で、15ポイントを超える大きな乖離がありました。これらから、死を意識している人は、そうでない人に比べて、社会との関わりや生活の充実を重視している傾向にあることが分かります。
また、8項目中 7項目で、死を意識している人の割合が上回っており、死を意識することで、自らの死に時を考え、死に対する意思が明確になっていることが分かります。

4.死への意識と、生活姿勢・生活実感との関係

日ごろの生活姿勢や実感における違いは、以上の通りとなりました。
「他の世代と、積極的に交流している」「年齢なりに成長、成熟していると思う」「誰かの役に立とうとしている」などで乖離が大きく、死を意識している人が、そうでない人に比べて、積極的かつ調和的に周囲と関わっており、成長実感も高いことが分かります。
また、10 項目のうち8 項目で「死を意識している人」の割合が高く、全体に、自律的で前向きな生活姿勢が感じられる結果となりました。

5.死への意識と、幸福感との関係

現在の幸福度を 自己採点して頂いたところ、平均は7.45 点となり、次のように分布しました。
平均が7.45 点であったため、8 点と7 点を平均的な幸福度とし、それよりも上の10 点と9 点をつけた人の割合について、死を意識している人と意識していない人を比較したところ、前者は31.6%、後者は15.8%と約2 倍の開きがありました。死への意識と幸福度の高さが関係しているのではないかと考えられます。

6.死への意識と、死に関する体験や考え方との関係

「死について真剣に考えるきっかけがあった」「自分が死ぬことに対して、恐れはない」「自分の死後について、子らに話をしている」の3項目について、顕著な差が見られます。
死に対する意識の有無は、過去に、死について真剣に考えるきっかけがあったかどうかに大きく影響を受けている。そうして、死について考え、意識した結果として、死に対する恐れが消え、子らに対しても死を口にすることができるようになるのではないかと考えられます。

今回のアンケートでは、自分の死をしっかり意識する人ほど、生活が充実し、幸福度も高まる傾向にありました。長寿化によって高齢期の充実が重要課題となっていますが、死をしっかり意識することが、一つの解決策となり得るのではないかと考えられます。また、死を意識すれば、死を恐れず、死について会話をし、死を受け入れる時を明確にできるといった傾向が出ており、これは高齢者を支える子供世代にとっても、大きな恩恵になるはずです。
現代は、核家族化の進行や地域社会の変化によって、昔のように死を身近に感じる機会がなくなってきていますが、これによるマイナス面を示唆する結果となりました。

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