「中楽坊」スタイル

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送るための Webマガジン

中楽坊の現場から

2020年03月27日

「遺体搬送車に、エントランスで皆で手を合わせた日」~中楽坊の実話:1

ライフアテンダントに聞いた、入居者の方々のエピソードを連載しています。

――あるご夫婦が想い出に残っていると聞きました。
当時、ご主人が80歳、奥様は77歳のご夫婦でした。奥様が難病になられて、ご主人もそれまでの自宅では世話や通院が大変だということで、シニア向け分譲マンションを選んで、「中楽坊」に越してこられたんですね。
入居されたときはそんなに悪い状態ではなくって、ラウンジやレストランで友達と楽しく会話をされたり、一緒に散歩に出かけてたり、お元気にしておられました。
でも、1年くらいしてでしょうか。だんだんと調子が悪くなって・・・。

――どんな状態だったんですか?
嚥下力が低下してきたようで、それまでのように食べるのが難しくなったと言っておられました。会話していても、ちょっと言葉が出にくいようでしたし、表情も少し硬くなったような感じを受けました。
もともと活動的な方で、ずっと接客のお仕事をしておられたそうで、お仕事好きで、お話し好き。とても笑顔の素敵な方。だから、病気のことは「悔しいわー」と言っておられたし、このシニア向け分譲マンションに入居している元気な仲間を見て「うらやましいなあ」と。

――そんなプライベートなことまで、会話をするんですか?
この方に限らず、私たちがサポートステーションに居ると、声をかけてくれるんですよね。「今日、病院に行ったら・・・だった」とか「~~から旅行で家を空ける」とか、色んな話を毎日。そこから雑談も始まるでしょ。自然に入居者のことを知るようになります。もちろん、報告してくださいとは言ってないんですよ。私たちだけではなくって、入居者同士もそんな情報交換を日常的にしているので、お互いに詳しいです。

――なぜ、そういう会話が生まれると思います?
私たちから言えば、それぞれのことを知っているから、その後どうなったか訊きたくなりますよね。入居者の方も、自分のことを知っている人には「報告でもしておこうかな」という気持ちになるでしょうし、しゃべることでホッとされる面もあるかもしれません。そんな好循環でしょうか。
入居者同士も、あまり隠しごとがないですよ。だから、誰かが入院したとなったら友達はお見舞いに行ったりしています。

――なるほど。話を戻しますが、その奥様のその後は?
しばらくは、中楽坊で暮らしていらっしゃいましたけど、徐々に病状が悪化して入院。それから数カ月、入退院を繰り返しておられましたけど、残念ながら亡くなられて。
お亡くなりになってすぐ、ご主人から電話があったんです。
「妻は、このシニア向け分譲マンション・中楽坊をとても気に入っていました。2年半ほどだったけど、ここの暮らしは楽しかったと言っていました。だから、病院から葬儀場へ運ぶ搬送車でマンションの前の道を通って、最後に妻に見せてやりたいんだが、いいだろうか?」
そういう話でした。

――何と答えたんですか?
前の道から見るだけ?と思いました。
それで、「どうぞ、遠慮されず中まで入ってきてください。マンションのエントランスまで来てください。お別れしたい人もいますから。」と言いました。

――マンションですから、嫌がる人や反対される人がいるとか考えませんでしたか?
いえ、まったく迷いはなかったです。中楽坊は、そんなコミュニティではありませんから。

――で、エントランスまで?
はい。マンションのエントランスまで搬送車が来ました。
後ろの扉を開けていただいて、手を合わせました。仲の良かった入居者の方々や、私たち職員を含めて十数人でお見送りしました。ご主人も喜んでおられたと思います。

――ご主人のその後は? 奥様を亡くされると男性はガクっとくるというケースも多いですが。
84歳になっておられますが、お元気ですね。お友達とレストランでよく会話をされてます。普通、配偶者を亡くされた単身男性は孤独になりがちですけれど、ここでは仲間同士で助け合う、見守りあうという意識が高いんです。
奥様が亡くなってしまって、自分では家事もできないし友達もいない、周囲に助けてくれたり見守ってくれる人もいないというケースだと、確かにガクっとくるというのも分かりますが、中楽坊はそうならないように工夫された環境ですし、いいコミュニティもありますから。これからも、こんなコミュニティが続くように頑張りたいと思っています。

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