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老いを学ぶ

2012年07月25日

老いの工学研究所提供

北米における『シニア住宅』事情

老いの工学研究所

アメリカ合衆国において高齢者介護施設を運営する大手企業であるSUNRISE社(ナスダック上場企業)が、日本への進出を計画しており、その手助けを求めているという依頼に基づいて、1999年11月にカリフォルニア州ロサンジェルスに出向き、アメリカ合衆国における介護施設の状況を視察する機会を得た。
その時に体験したアメリカ合衆国における介護システムや保険制度、介護の内容や高齢者住宅の理念、高齢者介護における思想的・宗教的背景などについて数回に分けて報告しようと思う。
アメリカ合衆国における高齢者用住宅は、1960年代から1980年代にかけて急速に普及した『ナーシング・ホーム』(小規模な有料老人ホームで日本の高齢者専用賃貸住宅に似ている)が中心となるが、急速な普及の中で悪質な私企業による劣悪な施設が社会問題化し、1987年の連邦政府による法改正によって初めて公的な規制が敷かれ、初期段階の『ナーシング・ホーム』の建設は急速に衰退していった。
これに変わって台頭し始めたのが、健康な退職者が新しいコミュニティーを形成できる『リタイアメント・タウン』や『リタイアメント・ホーム』である。

『リタイアメント・タウン』とは高齢者専用の住宅団地の総称となっているが、アリゾナ州の『サンシティ』(人口40000人強)やカリフォルニア州ラグナウッズにある『レジャーワールド』(人口20000人弱)が有名である。基本的には55才以上という規定を設けて、主に退職した健常な高齢者が住む分譲住宅が中心となっている。
分譲住宅の種類は一戸建て・コンドミニアム・タウンハウス・アパートなどがあり、大きさ、価格は様々である。価格にすればおおよそ1500万円から1億円以内である。住宅団地内の施設としては、コミュニティーセンター・ショッピングセンター・図書館などに加え、クラブ活動施設(プール・乗馬・工芸センター・カードダイスなどの遊技場など)や1000円以内で利用できるゴルフコースが隣接する。月額規定料金(20000~30000円)を払えばこれら全ての施設がフルに利用できるシステムになっている。

こうした住宅団地では主に健常な高齢者を対象としているため、日常を活動的に過ごすためのシステムは充実しているが、特に介護を必要とする人や慢性的な老人病を有する人に対しては、隣接する敷地に医療や介護を提供するアシスティッド・リビング式の住宅や新法制下でのナーシング・ホームと呼ばれる施設が併設されてる場合が多い。

これに対して『リタイアメント・ホーム』はもっと小規模のもので、点在する住宅棟という雰囲気を持っている。住宅の分譲型はほとんどなく、権利金と月額利用料金(一般的には350000円~600000円)を支払うシステムになっている。全米各地にあるが、65歳以上の高齢者であっても、健常な状態から入居し、病状や介護の必要性に応じて種類の違う住宅棟に移っていくシステムになっている。ある程度の介助があれば普通に暮らせる住宅棟とフル介護を必要とする住宅棟とは分かれており、最終的にはホスピスも兼ねる新法制下でのナーシング・ホームが併設されている。言葉を替えれば、切れ目のない介護を提供している。この為日本の有料老人ホームのような病状や介護度の昂進によって入退去の必要に迫られることはほとんどない。

この『リタイアメント・ホーム』の中には、上記のような介護度に応じた一連の施設を併設するタイプのもの以外に、インディペンデント・リビング(完全な自立型高齢者住宅)やアシスティッド・リビング(介護の支援を得て自立した生活を送る高齢者住宅)と呼ばれるより小規模(50~100戸未満)の住宅施設があり、これらは主に健常者あるいは介護度の低い段階の人々が老後を活動的に暮らせる工夫に重点を置いている。
特にインディペンデント・リビングの場合は、入居者が医療や介護などのサービスを特に必要としている訳ではないので、多くの地域から移動して入居してきた人々同士の新しいコミュニティー形成に主眼が置かれている。これに対してアシスティッド・リビングの場合は、少し手仇助をすれは自立して生活ができることを目的とているので、少人数の看護師やヘルパーが常駐して生活の支援をすることに主眼を置いている。
このような様々な高齢者住宅や施設が運営されている背景には、日本とは異なる社会システムや思想があるわけなので、そのまま導入するわけにはいかないのだが、随所に見るべき点があるのは間違いない。

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