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老いを学ぶ

2020年04月25日

老いの工学研究所提供

【調査結果】日本人の寿命が延びることを期待する人は、4人に1人。

高齢期のライフスタイルのシンクタンク、特定非営利活動法人「老いの工学研究所」(大阪市中央区)は、「健康・医療に関する意識調査」を実施し、40 歳から94 歳まで533 名の回答を得ましたので、その結果をお知らせします。

1.寿命の延伸に期待するのは 4人に1人。尊厳死の法制化を望む7割超

寿命や死に関する質問への回答は、上の通りとなりました。
日本人の寿命がさらに延びることを願うか」という問いに対し、肯定的だった人(「そう思う」「ややそう思う」の合計)は 24%にとどまり、否定的な回答(「そう思わない」「ややそう思わない」の合計)が、39%と大きく上回りました。
また、「とにかく長生きしたい」と考える人は 36%で、そうは思わない人が 40%と上回っています。
「国の財政を考えると、高額の治療薬を使うのは気が引ける」と思う人は 55%と半数を超えました。これらから、長く生きること自体に価値をあまり感じず、生き方を重視しようとする人が増えているものと考えられます。
尊厳死の法制化を望む人は74%に上りました。本人が望まない延命治療が施されるケースが多い現状に対し、本人の意思が尊重された死が迎えられるよう、制度的な面から改善を望む人が非常に多いことが分かります。
日本は世界トップクラスの長寿国ですが、寿命の長さよりも「高齢期の生き方」「最期の迎え方」を重視する傾向が強くなっているものと考えられます。

2.76%の人が、高齢者への過剰な診療・投薬を問題視

医療に関する質問への回答は、上表のようになりました。
「高齢者には、必要以上に治療を受けたり、薬をもらったりしている人が多いと思うか」という質問に対して 肯定的な人が76%と、そう思わない人の7%を大きく上回りました。高齢者への過剰な診療・投薬を問題視している人が非常に多いことが分かります。
一方で、「高齢者は病院に行くのが楽しそうだ」「高齢者の医療費の自己負担割合は、現役世代と同じでよい」は、それぞれ18%、30%に留まっており、過剰診療・過剰投薬の原因が高齢者の「無駄な通院」や「安い自己負担」ではなく、病院など医療側にあると考える人が多いのではないかと考えられます。

3.女性よりも、男性が長生きをしたいと考える

男女で、大きな差が見られたのは3項目でした
「日本人の寿命が延びるのを願う」、「とにかく長生きしたい」と考える人の割合は、男性が女性より14%多く、「高額の治療薬の使用は気が引ける」と回答した割合では、女性が14% 男性を上回りました。女性よりも男性のほうが長生きをしたいという欲求が強いことが分かります。

4.高齢になるほど「長生きしたい」という欲求が強くなる

年代別にみたのが、上表です。
「とにかく長生きしたいと思って暮らしている」は、年代が上がるにつれて増え、80歳以上
では約半数となりました。一方、「尊厳死の法制化を望む」のは年代が上がるにつれて減っており、現実に死を意識する年になるほど、長生きが目的になっていく傾向が伺えます。早い年代において、人生の最終盤の生き方・死に方を定める必要があるのではないかと考えられます。
「高齢者は、病院に行って友人や仲間に会えるのが楽しそうだ」は、59 歳以下では半数近くがそう感じている一方、60歳以上では10%程度にとどまりました。

●まとめ

日本人の寿命がさらに延びることを望まない人が約4割、「とにかく長生きしたい」とは思っていない人も約4割と、「長寿はめでたい」といった昔ながらの考え方が大きく変わってきている状況が伺える結果となりました。
尊厳死の法制化を望む人も7割超に上り、寿命よりも、高齢期の生き方、人生の最期の迎え方に関心が向いていることが分かります。

高齢者医療については、若い世代だけでなく高齢者自身も、診療や投薬が過剰になっていると認識しています。また「国の財政を考えると、高額の治療薬の使用は気が引ける」と回答した人の割合は55%に上っており、医療費の増大に対する危機感が広く共有されていることが分かります。

今回の調査から、「長生きを目的とした医療」「高齢者に対する過剰な診療・投薬」に対して批判的な態度をとる人が増えているものと思われ、医療のありように関する見直しが急務であると考えられます。

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