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高齢期を語る〜著名人インタビュー〜

2016年01月11日

老いの工学研究所提供

西川ヘレンさん ~母から教わった「ものの大切さ」、この歳になってよくわかるように

タレント 西川ヘレンさん

3人の子どもを育てた母であり、6人の孫のおばあちゃん。自身もタレントとしてテレビに出演したり、講演で全国を回ったりと忙しい日々を送っている西川ヘレンさん(69)。
料理上手でも知られ、毎日新聞で毎月、家庭料理のレシピを披露されているコーナーは、主婦の絶大な人気を集めています。おいしくてヘルシーで愛情たっぷりの料理で、夫の西川きよしさんをはじめ大家族の胃袋を満たし、健康を支えてきたスゴ腕主婦のヘレンさんに、年齢の重ね方や夫婦の触れあい、そして自分らしく生きる秘訣などをうかがいました。

ーーお弟子さんを入れて15人、今は9人家族の大所帯を支えてこられました。人数分のご飯を作るのも大変でしょうが、ヘレンさんのお料理は始末とひと手間かける愛情が素晴らしい。

買い物をしている時には家族の顔を思い浮かべて、一日健康で過ごせるようにと祈ってます。料理の基本のおだしは毎朝5㍑作って、和食だけでなく洋食にも中華にも使います。だしを取るのに使った昆布やシイタケは、捨てずに料理に使います。主人と一緒になった頃は、お金がなくて6畳一間暮らし。朝昼晩とおからを炊いてたし、八百屋さんでくず野菜をもらってました。毎日が必死で、食事も命懸け。いろいろ考えましたよ。だから主人が夜中にお客さんを連れてきても、アイデアがあれば何か作れます。お客さんに喜んでもらおうという気持ちで。一度、子どもたちがそれぞれ友だちを連れて来て、50人分の食事を作ったこともあります。

ーー自分のお母さんや、きよしさんの両親と同居されてきましたが、教えられたことは、どんなことでしょう。

主人の母や私の母からは、始末とか、ものの大切さを教えられました。若いときは『なに?』って思ってましたが、この年齢になったらよくわかりますね。主人の母は『足袋を作った』って。「ええーっ、作るもの?」って聞き返しました。私の母は、着物を洗い張りして染め直してましたし。一つのものを大切に、命を長く保つ知恵を持ってたと思います。

ーー講演では、どんなお話をされているんですか。

大家族の中で過ごして、世代を超えて体験したことや、クスッとおかしかったこととか。亡くなりましたが、自分の母と主人の父を介護しましたし、今は主人の母を介護しているので、介護のお話などもします。大切なことは、生まれてきたからには一日一日元気に過ごしましょうと。
それと女学生さんには、私が少女時代は目が青くて金髪だったから差別されたので、『みんな平等だよ』って。

ーー敬老の日の前後には、きよしさんと老人ホームの慰問を長年続けてます。

私たちが司会して、お年寄りたちに1年かけてお稽古された歌や踊りを披露していただいて。少しはお化粧したり、普段は着ないスーツを着たお年寄りたちと一つになって、私たちも職員の方も時間を忘れます。1年間笑わなかった方がお部屋を訪ねたらニコッと笑ってくれたり、去年歩けなかった人が舞台に上がったり。皆さん、楽しみにしてくださって、うれしいですね。
障害者の人たちのところにも行ってます。できることはやらせてもらおうと。

ーー吉本新喜劇の人気女優だったヘレンさんが、まだ売れていなかったきよしさんと結婚して約50年。大家族の上に、あちこち飛び回る日々だと、夫婦二人で過ごす時間はどう作っているんですか。

家の中で二人で過ごすのはお風呂です。私が入ってたら主人が入ってきますし、主人が入ってても私が入ります。父母と同居でしたから、45年ずーっとです。一日のことやこれからのことなんかを、ゆっくりしながら話します。気が付いたら主人が背中を流してくれてたり、「パパ、頭薄くなったね」なんて話したり。私たちを見てたからか、息子夫婦もやってますし、主人と息子も二人で入ってますよ。

ーー来年で70歳。年を重ねた日々の楽しみ方って?

お仏壇に手を合わせて一日が始まります。仏壇にご飯をお供えするのは、一番に起きた人の役目です。手を合わせながら、ふっと見たお庭に春が来た時の芽吹きのすばらしさ。赤ちゃんのような軟らかい葉っぱを見て感じたりします。梅雨時はアジサイ、真夏はセミのすごい音を楽しんで。

ーーやかましいセミの声を楽しめますか?

我が家の土の中に、すんでくれてたんですから。孫が抜け殻を取って遊んでみたりね。花を床の間などに生けるのも楽しみです。セミが終わったら鈴虫など、秋の虫の音色が聞こえてきて、季節が変わったなあと感じることができますし。冬になったら、台所でコトコト、煮物の音。幸せな音やなあって思います。
昔は火鉢を出して、ものを焼いたり、熱燗したり。忙しい中にもなんか見つけ出す。そうして1年を過ごしてますね。

ーーこれからやってみたいことはありますか?

毎日毎日をこなしていくというか、精いっぱいなので、習い事とか体を使うことをやってみたいなあと思うんです。何もかも忘れて没頭できる時間ができたら。希望なんですが、夫婦二人で英語習えたらええなあ。海外に行っても、娘がいないと何もできないので。夫婦二人で旅を楽しみたいですね。


【関連】老いの工学研究所のホームページ

西川ヘレン(にしかわ・へれん)

1946年、京都生まれ。父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフ。高校中退後、吉本興業に所属、シャンソン歌手やミュージカル女優を目指した。ヘレン杉本の名で、吉本新喜劇で活躍し「わたし外国人やから、日本語わかりません」と関西弁でまくしたてるギャグで人気女優に。67年、西川きよしさんと結婚。2男1女に恵まれる。
現在は、実母、舅、姑の介護の経験談や自身の生い立ちなどを話題にした講演会を中心としたタレント活動を行っている。夫の西川きよしさんと老人ホームへの慰問活動も精力的に行っている。
著書に「泣いて笑ってみおくって 大家族・西川家の多重介護」、「西川ヘレン&かの子のおいしい和風レシピ」など。
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